耳管とは
中耳と鼻の奥をむすぶ管のことで、上咽頭という鼻の奥に開口しています。左右1本ずつの管となっており、中耳側は骨部、鼻側は軟骨部と分類されます。中耳側の入口を耳管鼓室口、上咽頭側の入口を耳管咽頭口と呼びます。
主な機能
換気、排出、病原体からの防御などの機能をもり、耳疾患に大きな影響を及ぼす器官です。通常耳管は閉鎖していますが、あくびや嚥下時の短時間のみ開きます。
耳管開放症(Patulous Eustachian tube)とは
耳管開放症は、耳管が通常よりも長い時間にわたり開放することですが、以下のような不快な症状をあらわれます。
代表的な症状
- 自声強聴(自分の声が響いたり大きく聞こえる)
- 耳閉感(耳がこもったり、膜がはったように感じる)
- 自己呼吸音聴取(自分の呼吸音が聞こえる)
- 臥位や前屈位での症状の改善(重症例だと改善がない場合もあります)
- 立ち仕事や運動後に症状が増悪する
など
原因
体重減少、妊娠、透析などがあげられますが、原因不明であることも多いです。
診断
詳細な問診、オトスコープと呼ばれるゴム管を耳に入れて発声、鼓膜の動揺や咽頭所見の観察、聴力検査、ティンパノメトリーなどの結果をみて総合的に評価します。
治療
重症度に応じて、生活指導、点鼻療法、漢方療法、耳管処置を選択します。
生活指導
やせの改善・予防、水分補給、スカーフ療法、運動後には適切な水分補給、マスクをして保温・保湿に務めることも効果がある場合があります。
頸部圧迫(男性ならネクタイ、女性ならスカーフやハイネックのセーターなど)により耳管周囲にむくみを生じさせると症状が軽減します)。
鼻すすりの禁止
鼻をすすると症状が改善することがありますが、これはあまり良いことではなく、鼓膜がどんどん内側へと引っ張られてしまうため、真珠腫性中耳炎の原因となります。
点鼻療法
症状のある側の鼻から生理食塩水をたらします。副作用がほとんどないので手軽に行える治療法です。
漢方療法
加味帰脾湯などを内服します。
鼓膜換気チューブ留置術
滲出性中耳炎などに行う鼓膜換気チューブは鼻すすりをしても鼓膜がへこまなくなり真珠腫性中耳炎への進行を妨げるなど、耳の圧迫感軽減になります。
耳管ピン挿入術
当院では行っておりませんが、上記の保存的治療療法を行っても症状が改善せず、かつ診断時に重症例の耳管開放症の場合に選択します。